老齢基礎年金の繰上げ支給のメリット・デメリット
老齢基礎年金の繰上げ支給制度を利用するにあたり、そのメリットとデメリットを理解しておく必要があります。
当然、良い点もあれば悪い点もあるのですが、基本的にデメリットばかりです。
まず最初に、簡単に説明できるメリットから。
- 本来65歳から支給の老齢基礎年金を60歳以上65歳未満の年齢から受給できる
正直、これ以外のメリットは見当たりません。
次に挙げるデメリットを受け入れる覚悟がなければ、繰上げ請求は利用しない方がよいでしょう。
繰上げ支給を受けると一生減額される
老齢基礎年金の繰上げ支給で一番のデメリットは、年金が一生減額されることでしょう。
65歳になっても元の年金額には戻らず、亡くなるまでずっと減額されたままということを覚えておいてください。
昭和16年4月2日以後生まれの場合
繰上げ請求した日の属する月から65歳に達する日の属する月の前月までの月数に0.5を乗じた分、減額となります。
例えば、62歳6ヶ月で繰上げ請求した場合、65歳までは30ヶ月(2年半)なので、
30ヶ月 × 0.5 = 15%
したがって、年金支給額の15%が一生減額されることになります。
ちなみに、以下の表が60歳以後1歳ごとの減額率です。
年齢 | 減額率(昭和16年4月2日以後生まれの場合) |
---|---|
60歳 | 24%(60月 × 0.4) |
61歳 | 19.2%(48月 × 0.4) |
62歳 | 14.4%(36月 × 0.4) |
63歳 | 9.6%(24月 × 0.4) |
64歳 | 4.8%(12月 × 0.4) |
昭和16年4月1日以前生まれの場合は、減額率が高く、年単位となります。
月単位ではないため、62歳1ヶ月でも62歳11ヶ月でも減額される額は同じです。
年齢 | 減額率(昭和16年4月1日以前生まれの場合) |
---|---|
60歳 | 42% |
61歳 | 35% |
62歳 | 28% |
63歳 | 20% |
64歳 | 11% |
その他のデメリット
老齢基礎年金を繰り上げて受給すると、減額の他に次のようなデメリットが生じます。
- 繰上げ請求が認められると取消・変更はできない
- 受給権発生後、障害基礎年金は支給されない
- 受給権発生後、寡婦年金は支給されない
- 寡婦年金の受給権者が繰上げ受給すると、寡婦年金の受給権は消滅する
- 遺族厚生年金の受給権を有している場合、65歳までは繰上げ支給の老齢基礎年金と遺族厚生年金どちらか一方を選択して受給し、65歳以降に減額された老齢基礎年金と遺族厚生年金を併給できる
- 繰上げ支給を受けると任意加入被保険者にはなれない
- 付加年金も同じ率で減額される
- 受給条件を満たしていれば老齢厚生年金も同時に繰上げ請求となる
更に、平成16年4月1日以前生まれの方は、上のデメリットに加え、次のデメリットも負います。
- 第2号被保険者である間は繰上げ請求できない
- 繰上げ支給を受けている人が会社員(第2号被保険者)になったら、その間は全額支給停止される
- 特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止。ただし、繰上げ支給の老齢基礎年金が全額支給停止されている間は支給される
以上のように、老齢厚生年金の繰上げ支給には多くのデメリットが生じます。特に、昭和16年4月1日以前生まれの方はかなり悪い条件となりますので、できるだけ避けた方がよいでしょう。